天正10年(1982年)3月、武田は滅びた。旧臣が次々と信長に討ち取られるなか、あえて織田に仕えることを決意した真田昌幸。しかし、織田が受け入れてくれる確証はなかった。

-第3回「策略」冒頭より-

3月中旬、昌幸らは上野・岩櫃城より信濃・真田の郷に戻る。今回は歴史的に大きな動きはなかったが、新しく登場する重要人物も多く、第2回よりコントとしても楽しめる場面が多かった。家康は3週連続の登場となり、どうやら予想以上に出番の多いキャラクターとなりそうだ。

きりと梅

きり(長澤まさみ)は真田家重臣の高梨内記(中原丈雄)の娘。梅(黒木華)は真田郷地侍の堀田作兵衛興重(藤本隆宏)の妹(史実では妹とも娘とも)。どちらも実在した人物で、後に信繁(堺雅人)と深い関わりを持つことになるが、これ以上書くといわゆるネタバレとなる。

NHK新大型時代劇『真田太平記』(1985年)でも現代的な価値観を重視してか、正室以外で信繁と関わりを持つ女性は忍びのお江(架空)しか描かれていなかったので、今回堂々とこの2人の重要人物を登場させるのは大きな挑戦でもあり、描き方次第では批判が出たり視聴者が離れることになるかもしれない。

高梨内記や堀田作兵衛、出浦昌相(寺島進)も『真田太平記』には登場しなかったが、最後まで大きな役割を担う重要人物で、ここでも脚本家の史実を重視する姿勢を読み取ることができる。特にこの出浦昌相という人物、今のところ台詞は少ないながらも妙な存在感を漂わせており、これからどういう描かれ方をするのか非常に楽しみだ。

今回の名場面

その出浦と室賀正武(西村雅彦)に密書を奪われたと嘆く信幸(大泉洋)の前に、出浦が何食わぬ顔で現れてあっと言わせる場面。信幸だけでなく、きっと視聴者の多くもあっと言わされてしまったことだろう。ここでの出浦は昌幸(草刈正雄)とともに「食えない男」を実にうまく表現していた。

巷で心配されていたラブコメパートも、梅が見た目とは裏腹の怪力ぶりであの大きな兄を突き飛ばすシーンが妙に面白く、その後のきりのおんぶアピールや茂誠(高木渉)の何ともいえない泣き面も「演技」を感じさせず、物語を大きく阻害する要因とはなっていない。

ただ、信幸の妻・こう(長野里美)のあのゴホゴホした病弱なキャラクターは面白くはあるが、そのキャラ付けが今後どのような重要性を持ってくるのだろうか。今回は不健康で鬱屈した信幸夫婦と健康的で明るい弟たちという対比を際立たせる役割を担っていただけである。

信幸にまつわる人たち

こうはおそらく昌幸の長兄・信綱の娘、つまり信幸の従姉にあたり、信幸に嫁いで正室(小松姫が輿入れしてからは側室に下げられたとも)になったとされる人物である。後に清音院と呼ばれることになったようだが、確かな資料はあまり残っていない。それだけにより自由なキャラ付けができるということなのだろう。

小松姫の父で後に信幸の岳父となる本多忠勝(藤岡弘、)も今回初登場だったが、主君の家康からも煙たがられるような鬱陶しい人物として描かれており、鬱屈しつつある信幸のキャラクターを更に推し進めていく人物になりそうで信幸の将来が若干心配にはなってくる。

他にも、叔父の真田信尹(栗原英雄)と大叔父の矢沢頼綱(綾田俊樹)が初登場だったが、今回は顔見せ程度でこれから出番はいくらでもあるはず。次回は織田信長との対面と本能寺の変、そしてその後は前半最大の山場である天正壬午の乱~上田合戦がいよいよ始まる。

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筆者

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