S前回、脚本の森下が担当したTBSのドラマ『白夜行』(2006年)についてあれこれ言ってたけど、亮司&雪穂の形が政次&直虎になるとは思わなかった。

M:うん。第32回「復活の日」での直虎(柴咲コウ)の「もうじき、陽の光の下で(碁を)打てるようになるのう」という言葉でハッとした。おそっ。

S:「陽の光の下で一緒に生きる」というのは、罪をかぶり合いながら白夜で生きてきた亮司(山田孝之)と雪穂(綾瀬はるか)の合言葉でもあった。それが難しいことだっていうのは亮司と今回の政次(高橋一生)はわかっていた。そして愛するものを「陽の光の下」で生かすために自分だけ死ぬ……背負っていたものの種類は違うけど、やはりシンクロしてしまう。

M:その愛するものは政次にとって直虎であり井伊であり。だから直虎は近藤たちの恨みからその井伊を守るために、自らの意志でもって政次を殺さなければならなかった。

S:そこで『白夜行』との違いが。

M:でも雪穂は、自らの意思で亮司を殺したり警察に突き出すようなことはしなかったけど、警察に対する供述では一貫して亮司を悪者に仕立て上げた。それが亮司の意志でもあったから。2人の店である「R&Y」を守るために、形は違えど同じことをしている。

S:形なんかより順序が大事。そこが今回の意外性でもあって。結果、直虎は城主として能動的に井伊を守ったということに。

M:たしかに雪穂の態度はあくまで受動的。

S:だから結局、店主として店も守ることができなくなる。そして『幻夜』の世界へ……。

M:城主はつらいよ(第13回)……。

S:とにかく、女性の主人公が長らくコンビを組んできた相方を直接手にかけるなんて、大河ドラマ始まって以来の暴挙かも。

M:篤姫(宮崎あおい)が小松帯刀(瑛太)や家定(堺雅人)をグサッとやるようなものか……。家定急死の真犯人は篤姫だった(!?)みたいな。

S:……政次の演技は安定の巧さと凄さだったけど、なによりも直虎の凄みに度肝を抜かれた。女性の凄みというと、『武田信玄』(1988年)のおつね(古村比呂)が義信(堤真一)死後に信玄(中井貴一)を罵った場面を思い出したけど、今回は主役だし背負っているものがまた違う。

M:今までの直虎からは考えられない。高橋一生目当てで見ていた女子小中学生たちがトラウマにならないか心配になるくらい凄かった。

S:そこで、明後日23日に『鶴のうた』という追悼のCDが急遽発売されることに。


緊急特盤『鶴のうた』

M:『新選組!』(2004年)の山南総長(堺雅人)でも追悼盤までは出なかったのに(笑)。そういえば今回の「嫌われ政次の一生」というサブタイトルも面白い。

S:『嫌われ松子の一生』の松子が働いていたソープランドの店名が「白夜」だったり、「嫌われ政次の(高橋)一生」と役者の名前がかけられていたり。家康(阿部サダヲ)の土下座移動も面白かった。

M:はたしてあれは必要だったのか……。

S:ところどころよくわからないこともしてくる。

M:でも、今回の磔シーンは役者の名演もあって大河ドラマ史に残る名場面として語り継がれていきそう。

S:そして直虎と井伊の正念場はここから始まると言ってもいい。

M:うん。気賀がとんでもないことに。直虎は大きな悲劇を背負いながらも井伊のために立ち直らなければならない。

S:ほどなくして武田の矛先が徳川に向けられ、遠江全体が再び危機に晒される。

M:歴史が動いてきた感じがする。

S:直政(菅田将暉)の登場は第38回(9月24日放送)からになるそうで。このあたりから終盤ということになるのだろう。

M:瀬名(菜々緒)が殺される回でまた大きな悲劇に。

S:悲劇は続く。

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