カール・グスタフ・ユング(1875年 – 1961年)の「タイプ論」を用いて、音楽家のヨハネス・ブラームス(1833年 – 1897年)の性格を分析する。

心理態度(外向ー内向)

ドイツのハンブルクの生まれ。決して恵まれているとはいえない教育環境のなか、着々と作曲とピアノの技術を磨き、20歳の時にヴァイオリニストのレメーニと演奏旅行に発つ。その途中で当時権勢を振るっていたリストに会うも、弟子や取り巻きを従えたその姿に露骨に嫌悪感を示し、そのリストにシンパシーを感じたレメーニとも袂を分かつ。そんななか、旅の途中で意気投合したヴァイオリニストのヨアヒムの強い勧めで、億劫ながらもシューマン夫妻のもとを訪ね、そして2人のその慎ましやかな生活と人柄に大きな感銘を受ける。外向性への反発と内向性への共感は終生変わらなかったようで、強い内向型といえる。

心理機能(思考ー感情、感覚ー直観)

シューマンの意思を継ぎ、リストの取り巻きやワグネリアンらの向こうを張って、ベートーヴェンの衣鉢を継ぐ優れた交響曲や室内楽曲を書き続けた。しかしそれまでの道のりは長く、その鋭敏すぎる感覚からいくつもの作品を書いては棄てざるをえなかった。交響曲でも短期間で書き上げることができた直観型のシューマンとは正反対といえる。また、その作品様式や恋愛に対する態度から頭でっかちの思考型と捉えられることも多いが、作品によってはシューマンやワーグナー以上の感情のほとばしりを感じられるものが少なくなく、奥手な恋愛態度もその内向性と強い自己批判によるところが大きいのだろう。主機能は感覚型、または感情型と見たい。

結果

以上から、ブラームスの性格は内向的感覚(感情)型と判断する。リストやワーグナーとは立場上対立したが、ワーグナーの音楽には強く惹かれるものがあり、またワグネリアンと見られ同じく対立関係にあったブルックナーとは、内向的な性格や自己批判の精神など共鳴する部分も多かったと考えられる。このような点から、シューマンが示した「新しい道」はブラームスにとって音楽の自由を縛ったと見る向きもある。しかし、ブラームスの性格や特性からも、限られた形式の可能性を追求することがむしろ楽想の多様性に転じたと見ることもできるし、ドイツのお家芸でもある相対立するものをアウフヘーベン(止揚)することでお互いを高めあったと捉えることもできるのではないだろうか。

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筆者

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