1996年 – 2005年
第35作 秀吉(1996年)
主人公:豊臣秀吉(1537年 – 1598年)
原作:堺屋太一 脚本:竹山洋 音楽:小六禮次郎 主演:竹中直人
初回:26.6% 最低:22.2% 最高:37.4% 最終:27.1% 平均:30.5%
どの視聴者層でも楽しく見ることのできる理想的な大河。第30回の本能寺の変以降は視聴率も30%を割ることが多くなるが、つまりそれだけ信長(渡哲也)の存在が大きかったということだろう。あの威厳ある信長がいたからこそ秀吉(竹中直人)の夢物語は光を放った。逆もまた然りで、あの人間味あふれる秀吉につられるようにして信長の魅力はより際立った。関白となった第37回以降は、秀吉の夢を継ぐ者として三成(真田広之)が物語を引っ張るが、晩年の秀吉に信長のような威厳は望むべくもなく、また全体的に曖昧模糊とした表現が多くなり視聴率も伸び悩む。
私的評価:90点
第36作 毛利元就(1997年)
主人公:毛利元就(1497年 – 1571年)
原作:永井路子 脚本:内館牧子 音楽:渡辺俊幸 主演:中村橋之助
初回:25.3% 最低:16.8% 最高:28.3% 最終:25.1% 平均:23.4%
ホームドラマの要素を強くするが、『秀吉』より謀略戦も多く、人間の裏の面までよく描かれていた。これも万人受けする大河といえる。『秀吉』における信長のような存在は宿敵の尼子経久(緒形拳)となるが、経久が世を去った第25回以降も話がダレなかったのは、秀吉と比べて元就(中村橋之助)自体に大きな成長が見られたからだろう。視聴率も後半大きく下がるようなことはなく、全体的に目配りの効いたバランスの良い作品。ただ、突飛な最終回は当時から賛否両論あった。
私的評価:70点
第37作 徳川慶喜(1998年)
主人公:徳川慶喜(1837年 – 1913年)
原作:司馬遼太郎 脚本:田向正健 音楽:湯浅譲二 主演:本木雅弘
初回:24.4% 最低:16.8% 最高:29.7% 最終:20.9% 平均:21.1%
室内での会話が多く、物語も淡々と進んでいく地味な作りなので、対象とする視聴者の年齢層はやや高めかもしれない。ただ、庶民や女性たちは表現豊かに描かれており、それが割と幅広い視聴者層を取り込み、また固定視聴者を飽きさせず視聴率の急落を防いだはず。そして、前半はやはり井伊直弼(杉良太郎)の見せ場が多く、物語を要所要所で締める。直弼と父の死を経て慶喜(本木雅弘)も「変身」(第20回)することになるのだが、前年の元就のような円熟味と懐の深さを感じられなかったことが、『元就』と違って後半の視聴率の粘りを欠いた要因の一つだろう。
私的評価:80点
第38作 元禄繚乱(1999年)
主人公:大石内蔵助(1659年 – 1703年)
原作:舟橋聖一 脚本:中島丈博 音楽:池辺晋一郎 主演:中村勘九郎
初回:25.0% 最低:14.0% 最高:28.5% 最終:28.0% 平均:20.2%
私的評価:未視聴
第39作 葵 徳川三代(2000年)
主人公:徳川家康(1542年 – 1615年)・徳川秀忠(1579年 – 1632年)・徳川家光(1604年 – 1651年)
脚本:ジェームス三木 音楽:岩代太郎 主演:津川雅彦・西田敏行・尾上辰之助
初回:22.6% 最低:14.5% 最高:22.6% 最終:20.3% 平均:18.5%
物語は太閤秀吉が薨去した1598年より幕を開ける。配役は腰の据わったベテラン俳優中心で、その名優たちが織りなす格調高い台詞回しは、これぞ日本の歴史ドラマと思わせる心地良いものであった。が、シニア層でもこのような擬古文調の言葉遣いに馴染みがなければ、おそらく言っていることの汲み取れない部分も多かったはず。そういう面でまず敷居が高かったのか、前半は視聴率も下降線を辿ったものの、家康(津川雅彦)と秀忠(西田敏行)の掛け合いなどは楽しく、その家康が世を去ってからも丁寧に作られていたので、後半に入ってむしろ視聴率は上向き加減にあった。ふんだんに予算を使った合戦シーンは言うに及ばず、個々の人間関係や歴史的事象もつぶさに描かれており、後世に残すべき大河ドラマの金字塔といえるだろう。
私的評価:90点
第40作 北条時宗(2001年)
主人公:北条時宗(1251年 – 1284年)
原作:高橋克彦 脚本:井上由美子 音楽:栗山和樹 主演:和泉元彌
初回:19.6% 最低:12.9% 最高:21.2% 最終:21.2% 平均:18.5%
私的評価:未視聴
第41作 利家とまつ~加賀百万石物語~(2002年)
主人公:前田利家(1539年 – 1599年)・まつ(1547年 – 1617年)
脚本:竹山洋 音楽:渡辺俊幸 主演:唐沢寿明・松嶋菜々子
初回:26.1% 最低:13.3% 最高:27.6% 最終:25.0% 平均:22.1%
2年前の『葵 徳川三代』の低視聴率を受けてか、97年『毛利元就』より更にホームドラマの要素を強くし、配役も民放ドラマで馴染みのある若手・中堅俳優を多く起用。そして何よりも女性視聴者を取り込むために、夫婦のダブル主人公という形でまつ(松嶋菜々子)の活躍を誰よりも際立たせる構成となった。そのことで利家(唐沢寿明)は後半になればなるほど無味無臭なキャラクターとなったが、代わりに腹黒い秀吉(香川照之)や強情な佐々成政(山口祐一郎)が最期まで独特の個性を放ち続け、物語に絶妙な濃淡をつけて視聴者を飽きさせなかった。視聴率的に成功した作品といえる。
私的評価:50点
第42作 武蔵 MUSASHI(2003年)
主人公:宮本武蔵(1584年? – 1645年)
原作:吉川英治 脚本:鎌田敏夫 音楽:エンニオ・モリコーネ 主演:市川新之助
初回:21.7% 最低:11.9% 最高:24.6% 最終:18.6% 平均:16.7%
私的評価:40点
第43作 新選組!(2004年)
主人公:近藤勇(1834年 – 1868年)
脚本:三谷幸喜 音楽:服部隆之 主演:香取慎吾
初回:26.3% 最低:13.4% 最高:26.3% 最終:21.8% 平均:17.4%
初回視聴率の26.3%という数字は、96年以降の大河では『秀吉』の26.6%に次いで高い。脚本に人気脚本家の三谷幸喜、主演に人気アイドルグループSMAPの香取慎吾を起用し、それだけ注目を集めていたということだろう。三谷はここでもその軽妙さを遺憾なく発揮したが、時代劇の経験がないと思われる香取が主演であったためか、序盤は軸が安定せず「妙」より「軽」のほうが目立ってしまった。ここで従来の大河ドラマ視聴者層が離脱し、視聴率も停滞することになったのかもしれない。ただ、脇がしっかりと主役を支えていたし、中盤以降は浮ついたところも少なくなり、むしろ若者が友の死や自身の死と真正面から向き合う緊張感のある回が多くなった。それでも視聴率の面で持ち直せなかったのは、2004年アテネオリンピック(金メダル歴代最多タイの16個)の影響も少なからずあったのだろうか。
私的評価:80点
第44作 義経(2005年)
主人公:源義経(1159年 – 1189年)
原作:宮尾登美子 脚本:金子成人他 音楽:岩代太郎 主演:滝沢秀明
初回:24.2% 最低:13.5% 最高:26.9% 最終:19.7% 平均:19.5%
前年同様、人気アイドルを主演に据えたことで大きな注目を集め、第10回までの平均視聴率は24.3%。その序盤を支えたのが平清盛(渡哲也)で、威厳がありながらも慈悲深い新たな清盛像を打ち立てた。清盛と決別してからも、武蔵坊弁慶(松平健)、藤原秀衡(高橋英樹)、源頼朝(中井貴一)といった大きな柱が随所で主人公を支え、軽さの目立った義経主従に対して重みを与えた。主役の義経(滝沢秀明)は演技の面で少なからず批判も受けていたが、所作や雰囲気という点においては「義経」になりきれていたように思う。後半視聴率が下がった原因を主役だけに求めることはできないだろう。
私的評価:60点
2006年 – 2015年
第45作 功名が辻(2006年)
主人公:千代(1557年 – 1617年)・山内一豊(1545年 – 1605年)
原作:司馬遼太郎 脚本:大石静 音楽:小六禮次郎 主演:仲間由紀恵・上川隆也
初回:19.8% 最低:17.3% 最高:24.4% 最終:23.4% 平均:20.9%
4年前の『利家とまつ』に続くダブル主演の夫婦物語となるが、その夫婦の形はどちらかというと『利家とまつ』よりは96年『秀吉』を感じさせたし、出世物語としても『秀吉』に通じる面白さがあった。千代(仲間由紀恵)の愛嬌ある嫌味を感じさせない演技は、ともすれば浮ついた印象を与えかねない夫婦のシーンに抑制を加え、一豊(上川隆也)の側近である五藤吉兵衛(武田鉄矢)と祖父江新右衛門(前田吟)のベテラン俳優2人も、万人受けする落ち着いた雰囲気を作り出していた。その辺りを反映してか、近年では珍しく視聴率も最後まで地味に伸び続ける。
私的評価:60点
第46作 風林火山(2007年)
主人公:山本勘助(1493年 – 1561年)
原作:井上靖 脚本:大森寿美男 音楽:千住明 主演:内野聖陽
初回:21.0% 最低:15.7% 最高:22.9% 最終:18.0% 平均:18.7%
私的評価:80点
第47作 篤姫(2008年)
主人公:天璋院篤姫(1836年 – 1883年)
原作:宮尾登美子 脚本:田渕久美子 音楽:吉俣良 主演:宮崎あおい
初回:20.3% 最低:20.3% 最高:29.2% 最終:28.7% 平均:24.5%
私的評価:60点
第48作 天地人(2009年)
主人公:直江兼続(1560年 – 1619年)
原作:火坂雅志 脚本:小松江里子他 音楽:大島ミチル 主演:妻夫木聡
初回:24.7% 最低:14.9% 最高:26.0% 最終:22.7% 平均:21.2%
私的評価:50点
第49作 龍馬伝(2010年)
主人公:坂本龍馬(1836年 – 1867年)
作:福田靖 音楽:佐藤直樹 主演:福山雅治
初回:23.2% 最低:13.7% 最高:24.4% 最終:21.2% 平均:18.7%
私的評価:80点
第50作 江~姫たちの戦国~(2011年)
主人公:江(1573年 – 1626年)
脚本:田渕久美子 音楽:吉俣良 主演:上野樹里
初回:21.7% 最低:13.1% 最高:22.6% 最終:19.1% 平均:17.7%
私的評価:40点
第51作 平清盛(2012年)
主人公:平清盛(1118年 – 1181年)
脚本:藤本有紀 音楽:吉松隆 主演:松山ケンイチ
初回:17.3% 最低:7.3% 最高:17.8% 最終:9.5% 平均:12.0%
私的評価:90点
第52作 八重の桜(2013年)
主人公:新島八重(1845年 – 1932年)
脚本:山本むつみ 音楽:坂本龍一(テーマ)・中島ノブユキ 主演:綾瀬はるか
初回:21.4% 最低:10.0% 最高:21.4% 最終:16.6% 平均:14.6%
私的評価:80点
第53作 軍師官兵衛(2014年)
主人公:黒田官兵衛(1546年 – 1604年)
脚本:前川洋一 音楽:菅野祐悟 主演:岡田准一
初回:18.9% 最低:12.3% 最高:19.4% 最終:17.6% 平均:15.8%
私的評価:40点
第54作 花燃ゆ(2015年)
主人公:杉文(1843年 – 1921年)
脚本:大島里美他 音楽:川井憲次 主演:井上真央
初回:16.7% 最低:9.3% 最高:16.7% 最終:12.4% 平均:12.0%
私的評価:50点
2016年 –
第55作 真田丸(2016年)
主人公:真田信繁(1567年 – 1615年)
脚本:三谷幸喜 音楽:服部隆之 主演:堺雅人
初回:19.9% 最低:13.0% 最高:20.1% 最終:14.7% 平均:16.6%
私的評価:70点
第56作 おんな城主 直虎(2017年)
主人公:井伊直虎(? – 1582年)
脚本:森下佳子 音楽:菅野よう子 主演:柴咲コウ
初回:16.9% 最低:10.6% 最高:16.9% 最終:12.5% 平均:12.8%
私的評価:70点
筆者
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