主人公:近藤勇(1834年 – 1868年)
原作:なし 脚本:三谷幸喜 音楽:服部隆之 主演:香取慎吾
初回:26.3% 最低:13.4% 最高:26.3% 最終:21.8% 平均:17.4%
4人の準主役
S:主役は一応、近藤勇(香取慎吾)ということになるけど、群像劇の形式をとり、試衛館以来の同士9人それぞれが主役といってもよいほどの活躍を見せる。
M:土方歳三(山本耕史)、沖田総司(藤原竜也)、山南敬助(堺雅人)の3人は特に魅力的な描き方をされていた。主役を超える存在感。
S:存在感といえば、前半における芹沢鴨(佐藤浩市)の存在はまさに他を圧倒するもので、劇中でもっともインパクトのあるキャラクターとなった。
M:鴨怖かった。
S:「男の弱さ」の見せ方がまた上手くて。佐藤浩市以外では考えられない役に。
M:山南も堺雅人以外では考えられない。それくらい大きな反響があった。その反響から年末に第33回「友の死」がアンコール放送されたほど。
S:ただ、この2人は前年の映画『壬生義士伝』でそれぞれ斎藤一役と沖田総司役で出ており、リアムタイムでどっちも見ていたらまた違った見方になっていた可能性も。
M:『新選組!』の芹沢と『壬生義士伝』の斎藤は共通する部分も多かったけど、『新選組!』の山南と『壬生義士伝』の沖田はまた全然違うキャラだった。
S:それを見事に演じ分けることができたことで、業界内でも確かな評価を確立することができたのだろう。いずれにせよ、芹沢と山南、特に山南は歴史の表舞台からは埋もれつつあった人物で、これを発掘した意義は大きい。
M:大河ドラマの大きな役割の一つ。
S:その他にも、特に新選組隊士はいずれも個性が際立っており、誰一人として同じようには描かれていない。
M:『壬生義士伝』の沖田がイメージにすっぽりハマっただけに、『新選組!』の沖田は少し割を食った部分もあるかも。でも、藤原竜也の沖田は天性の人懐っこさだけでなく陰影もうまく表現できていた。
S:求められているものも違うだろうし。逆に土方は『壬生義士伝』が弱かったことで『新選組!』の山本耕史がイメージを確立することができた。
M:土方といえば山本耕史になった。それまでは『新選組!』にも歳三の兄役で特別出演した栗塚旭だったみたいだけど。
S:大河ドラマでは初の続編となる『新選組!土方歳三 最後の一日』も制作された。
軽妙さと厳しさの狭間で
M:オダギリジョーの斎藤一は「寡黙な仕事人」という側面だけでなく熱い面も持ち合わせていた。
S:それは表裏一体のものでもある。彼にとって新選組という組織は絶対で、最後の最後まで義理を通したというだけであって。第47回「再会」の最後は名シーン。
M:永倉新八(山口智充)と原田左之助(山本太郎)のコンビもとても良い味出してた。左之助の中の人はなんか違う世界に逝っちゃったけど……。
S:あの2人は良い味だけでなく厳しさも持ち合わせていた。
M:女性陣ではお梅(鈴木京香)と明里(鈴木砂羽)が特に印象的。
S:芹沢にはお梅がいて、山南には明里がいて、沖田にはおひで(吹石一恵)がいて、永倉にはおその(小西美帆)がいて、左之助にはおまさ(はしのえみ)がいて、龍馬(江口洋介)にはおりょう(麻生久美子)がいて、桂小五郎(石黒賢)には幾松(菊川怜)がいて。
M:一方で、ヒロイン(?)となる近藤の妾・深雪太夫(優香)の描き方は平凡で魅力を感じなかった。
S:それを言ったら主役の近藤も同じで。
M:でも近藤の場合は、最初のほうこそ甘いことばかり言ってたけど、終盤にかけて厳しさも出てきた。
S:うん。香取慎吾の演技も後半に入って板に付いてきたような気がする。序盤に所作や発声の点で甘さが目立ったのも、脚本の軽妙さに流されたと見ることもできる。
M:序盤にその軽妙さが遺憾なく発揮されたせいか、視聴率も初回の26.3%からぐんぐん下がって第12回「西へ!」では早くも14.0%に……西へ行ってからが本番といってもいいのに。
S:それまでに従来の大河ドラマ視聴者層の多くが脱落してしまったのか。芹沢暗殺を描いた第25回「新選組誕生」や新選組の最大の見せ場といってもよい第28回「そして池田屋へ」などは、今見ても結構な緊張感の持続で見応えがある。12年後の『真田丸』ではこの「持続」が欠けてしまったように思う。
M:そこはまた賛否両論あって。とにかく、個々の心情や各々のコンフリクトをそこまでに時間をかけて丁寧に描いてきたからこその緊張感。敵対する勢力だけでなく、幼馴染の近藤と土方の間でもかなりの緊張感が漂っていた。
S:ただ、いまだに大河ドラマにしては軽すぎるという批判も多い。
M:たいして見てなくても、三谷幸喜だから軽いというのはあると思う。
S:うん、三谷の大河を手放しで褒めるのは恥ずかしいという風潮(?)もある。
M:同じ三谷幸喜脚本といっても『新選組!』と映画『清洲会議』(2013年)なんかでは作風が全然違うし、同じ大河でも『真田丸』とではまた違う。
S:作風というか強弱の付け方というか演出というか。
M:とにかく生活の党と山本太郎となかまたちも是々非々でお願いします。
S:もうそんな党はなくなったし、政治に頭を突っ込むとロクなことにならない。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
主要キャスト
近藤勇 香取慎吾
土方歳三 山本耕史
沖田総司 藤原竜也
山南敬助 堺雅人
斎藤一 オダギリジョー
永倉新八 山口智充
原田左之助 山本太郎
藤堂平助 中村勘太郎
井上源三郎 小林隆
芹沢鴨 佐藤浩市
お梅 鈴木京香
坂本龍馬 江口洋介
桂小五郎 石黒賢
西郷隆盛 宇梶剛士
佐久間象山 石坂浩二
勝海舟 野田秀樹
松平容保 筒井道隆
徳川慶喜 今井朋彦
佐々木只三郎 伊原剛志
伊東甲子太郎 谷原章介
八木源之丞 伊東四朗
八木ひで 吹石一恵
深雪太夫 優香
お登勢 戸田恵子
おりょう 麻生久美子
明里 鈴木砂羽
近藤周斎 田中邦衛
近藤ふで 野際陽子
近藤つね 田畑智子
沖田みつ 沢口靖子
滝本捨助 中村獅童
筆者
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趣味:競馬
得意分野:財務会計
好きな言葉:中庸の徳たるや、其れ至れるかな
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