TBS大型時代劇とNHK大河ドラマの先鞭

S:あと10日ほどで映画『関ヶ原』が公開される。

M:上映時間は2時間半かぁ……あっという間に終わりそう。

S:うん。原作の司馬遼太郎『関ヶ原』は新潮文庫で上中下巻の大部。司馬遼太郎の長編というと、昔々に上下巻の『燃えよ剣』が栗塚旭主演で映画化されているけど、近年では全1巻で収まる『梟の城』(中井貴一主演)くらい。

M:公開後は例によって「端折りすぎ」って批判が溢れそう。

S:それはわからない。でも関ヶ原の前後って、同じ原作のTBS大型時代劇『関ヶ原』(1981年)は当然として、大河ドラマでも何回も描かれていて馴染みのある時代だから、余計にそう感じてしまう可能性は高い。

M:なかなかのチャレンジだ。TBSの『関ヶ原』って7時間くらいあったんだっけ。

S:U-NEXTで確認したら、第1夜「夢のまた夢」が1時間34分、第2夜「友よ、さらば」が1時間33分、第3夜「男たちの祭り」が2時間28分の、合計5時間35分。TVで放送される時はCMの分も入るから。

M:2時間半(映画)と5時間半(ドラマ)……気持ち的にかなり縮まった。

S:TBSの『関ヶ原』を相当意識していたはずの大河ドラマ『葵 徳川三代』(2000年)は、該当する第2回「秀吉の遺言」から第13回「三成最期」までの12回を単純に45分で掛ければ、合計5時間40分。

M:時間まで意識していたりして(笑)。

S:時間だけじゃなくて、どっちの作品も社運をかけて取り組んだという気勢を感じられる。

M:配役も当時のオールスターキャストだったとか。TBSの森繁久彌(徳川家康)、三國連太郎(本多正信)、加藤剛(石田三成)、三船敏郎(島左近)……今の小学生でも名前は知ってそう。

S:いや、小学生はさすがに知らないだろう……。

M:福島正則に当時60近くの丹波哲郎を配しているんだけど、もっと他の役はなかったの。

S:ほぼ同い年の加藤清正役の藤岡弘が当時34歳。でも違和感はあまりなかった。さすが。

配役と予告編から

M:今回の映画の配役をパッと見て、一番年齢的な違和感を感じるのが左近役の平岳大だと思う。42歳って三成役の岡田准一(36歳)とそんなに変わらない。

S:うん。TBSの三船敏郎も『葵 徳川三代』の夏八木勲も当時60歳で、1600年時点の左近の年齢に合わせている。原作を読んでいる時にいつも頭に浮かんでくる左近像が大河ドラマ『風林火山』(2007年)の千葉真一(板垣信方役)。

M:なんとなくわかる。還暦過ぎても体格がガッチリしていて身のこなしも軽やかで……。

S:小説の中の左近がまさにそんな感じだから。でもそんな60代ってなかなかいない。予告編を見る限り、今回の左近も特殊メイクを施してなかなかの風格。年齢的なことをいえば、左近より歳上の秀吉を40歳の滝藤賢一が演じていたり。

M:これ見ると、秀吉の出番って結構多いのかも。しかも死ぬ直前以外の描写もいくつか見られる。

S:そこが、最初にほんの少し、あるいはまったく出なかった原作、TBSドラマ、大河ドラマとの大きな違いになりそう。

M:限られた時間の中でも、豊臣家と三成の強い結びつきを説明するために秀吉がどうしても必要だったとか。

S:蓋を開けてみれば「少し」ということになるのかもしれないけど。でもたしかに、TBSでも『葵 徳川三代』でも三成の豊臣家への熱い想いが伝わりにくい部分もあった。

M:昨年の『真田丸』ではその伏線となる秀吉と三成の関係がよく描かれていた。ただ、秀吉死後~関ヶ原までが予想以上にぎゅうぎゅうで残念だった。平岳大はその『真田丸』の勝頼役で結構な話題になったからここで抜擢されたのかも。

S:平や滝藤の年齢的なことはあまり気にならないけど、蛇白(伊藤歩)や赤耳(中嶋しゅう)といった原作で記憶にないオリジナルキャラ(?)が多いのは気になる。出番もそれなりに多そうだし。

M:オリジナルキャラより小早川秀秋(東出昌大)の背の高さ(189cm)のほうが気になる。

S:初芽(有村架純)も伊賀の忍びという設定に改変されていて、蛇白も赤耳も伊賀の忍びだからいつぞやの大河みたいに忍者だらけになりそう。

M:三成を見下ろす秀秋……。

S:秀秋の重要性が今までになく上がり、本多正信(久保酎吉)の重要性が今までになく下がりそうな点は気になる。そういえば『葵 徳川三代』で島津義弘を演じた麿赤兒が同じ役で出ている。

M:大森南朋のお父さん。あの雄叫びの敵中突破がまた見れたりして。

S:秀吉やオリジナルキャラの出番が多くなると、どうしても合戦シーンには多くの時間を割けなくなる。だから雄叫びの敵中突破も期待できないかも。

M:じゃあそこは『葵 徳川三代』の第1回「総括関ヶ原」(1時間25分)でガマンガマン……。

S:……いや、ちょっと調べたらエキストラの数は『葵 徳川三代』の500人に対して3000人ということで、結構力を入れているみたいだから、「退け口」くらいしっかり描いてくれるはず。

M:予告編を見る限りではそんなに多いようには見えなかった。3000人って凄い。

S:『葵 徳川三代』の500人でも大河では最初で最後の大規模合戦シーンといわれているのに。映画って凄い。

M:凄い。

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