カール・グスタフ・ユング(1875年 – 1961年)の「タイプ論」を用いて、音楽家のロベルト・シューマン(1810年 – 1856年)の性格を分析する。
心的態度(外向ー内向)
ドイツのツヴィッカウの生まれ。家は出版業を営んでおり、幼き日から書物に囲まれて育った。そのせいか、それなりに社交的ではあったものの、外的な世界より書物で育んだ内的な世界を大切にした。長じるにしたがって、その内的な世界と外的な世界の乖離は大きくなり、また精神疾患の症状も強くなってきたことから、人付き合いも必要最小限にとどめ、ますます自身の世界に沈潜していくことになる。作品の傾向としても、外的効果を狙ったものは少なく、自らが理想とする音楽を追求した。強い内向型といえるだろう。
心的機能(思考ー感情、感覚ー直観)
バッハとベートーヴェンの音楽をよく研究し、ベートーヴェンの後継者になることを生涯の目標とした。当初は、その偉大な先人たちの音楽をうまく消化して均衡の取れた作品を量産していたメンデルスゾーンの音楽を模範としたが、次第に不満を募らせていくことになる。これはコンプレックスの裏返しと見ることもできる。直観に秀でたシューマンには、メンデルスゾーンのようなバランス感覚に優れた音楽を書くことは容易ではなかった。その文章も直観的かつ感情的といってよく、また私生活においては非常な子煩悩でもあった。主機能は直観型、または感情型と見たい。
結果
以上から、ロベルト・シューマンの性格は内向的直観(感情)型と判断する。シューマンの悲劇は、この自身の特性を自身の指と同じように矯正しようとした点にあるのかもしれない。音楽においては、構造美を極めたベートーヴェンとメンデルスゾーンの作品が頭上にそびえ立ち、私生活においては、大演奏家としてメンデルスゾーン、リスト、そして自身の妻であるクララが目前で華々しく活躍していた。シューマンにとってこれらはすべてコンプレックスとなり、やがてその精神は破綻していくことになる。
筆者
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