前期ロマン派の弦楽四重奏曲を代表する名曲。メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は第6番まであり、特に第3番以降の4曲はベートーヴェンの衣鉢を継ぐ傑作ぞろいといえる。しかし、ブラームスの弦楽四重奏曲と比べても演奏される機会はきわめて少ない。その傑作ぞろいの中でも第6番は際立っており、メンデルスゾーンの最高傑作といっても過言ではない密度と厳しさを備えている。作曲されたのは1847年、つまり作曲者の死の年。この年の5月に幼き日よりユダヤ人としての苦悩を分かち合ってきた姉のファニーが42歳で急死し、非常な悲愴感を背負いながら数ヶ月後にこの曲を完成。そして11月、姉の背中を追うようにして同じ脳卒中で自身もこの世を去る。
作曲者がカペルマイスターとして率いたゲヴァントハウス管の奏者たちによって構成されるゲヴァントハウス四重奏団(’08)の全集が、全曲を通して作曲者に寄り添った熱のある演奏をしている。チェコのターリヒ四重奏団(’03)は、全集の他の曲では軽さも見られたが、この第6番では厳しいテンポで一気呵成に押し通して緊張感のある名演となっている。技術的にはゲヴァントハウス四重奏団よりこちらのほうが上なのかもしれない。逆に、全集の他の曲では理想的な演奏をしていたフランスのイザイ四重奏団(’93)は、この曲に関しても第5番からの延長線上で捉えており、幾分残尿感のようなものを覚えた。
筆者

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