20世紀の弦楽四重奏曲を代表する名曲。ショスタコーヴィチの15の弦楽四重奏曲がその数からいってもベートーヴェン以来最大の弦楽四重奏曲群とされるが、1曲1曲の密度でいえばバルトークの6つの弦楽四重奏曲以上のものは古今東西見渡しても見つからないかもしれない。その中でも1928年に書かれた第4番が、新ウィーン楽派やストラヴィンスキーの原始的な音楽などを消化し切って、バルトークの作曲技法上もっとも高みに達した作品とされる。その分、難解な曲が多いバルトークの作品の中でも特別なとっつきにくさを感じるものの、何度も聴いているとバッハの『フーガの技法』に通じる普遍性のある生理的快感を覚えてくる。
その『フーガの技法』で名演を聴かせたケラー四重奏団(’93-’94)が、バルトークの全集でも全曲を通して理想的な演奏をしている。世評の高いタカーチ四重奏団(’96)は、確かな技巧とダイナミックな奏法でバルトークの曲に宿る生命力を申し分なく伝える。しかし、ケラーのほうがより洗練されており無理なく身体に音楽が入ってくる。いずれも名盤としての地位を確立しつつあり、あとは好みの問題といえるのかもしれない。バルトークの弦楽四重奏曲を普及させるに貢献多大であったジュリアード四重奏団(’63)とアルバン・ベルク四重奏団(’86)の名盤も無視はできない。ただ、全集としての俯瞰力や録音状態(特にEMIのアルバン・ベルク盤は緩い)を考えればどうしても分が悪くなる。
筆者

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